今年で4歳になる雌のイノシシハナ子がいます。現在(05.6)、子育て真っ最中。初めての子育てで、失敗もしています。ハナ子は2001年10月、我が家の近くの小さな農道の路上で捕まりました。友人と2人で山からの帰り道、車から20メートルほど先の農道でうり坊を発見。わたしは車から飛び降りて全速力で追いました。うり坊よりもわたしのほうが足が速く追いつきそうになりました。突然、うり坊はUターン、わたしの横をすり抜けて逆方向へ走りました。その先には友人が待ち受けておりました。挟み撃ちです。うり坊はそのまま走り、友人はなんと噛みつかれてはたまらないと足で踏んづけて捕まえたのです。
よくイノシシは真っ直ぐしか走れないといわれるのですが、実際のイノシシはそう単純ではありません。しかし、その時のうり坊は真っ直ぐいっぽんやりでした。Uターンはしましたが、ただ真っ直ぐ走るのみ。わきへ逸れて藪に入られたらとても捕まえることなどできなかったのですが。いままでイノシシ以外にウサギ・タヌキ・ニホンカモシカを車で追ったことがあります。それぞれぎりぎりまで近づいて追いかけるとイノシシと同じようにただ道なりに真っ直ぐ走るだけです。少し余裕ができると脇道にはいって逃げるのですが、パニックに陥ると人も獣もあまりかわりはなさそうです。ちなみにニホンカモシカは全速力で走ると時速約30キロほどのスピードがでるようです。未舗装のガタガタの山道で何キロも後ろを走って確認しました。
踏んづけられているうり坊をわたしが抱き上げました。びーびービービー、ビービーびーびーと地獄の死者にでも捕まったかのように死にものぐるいで泣き喚くのです。他の野生動物は知りませんが、イノシシはつかみ上げられるのをたいへん嫌います。ほんとに嫌そうです。地に足がついていないともう不安で不安でたまらないようです。これは人になれてからも同じでよほど根気よく慣れさせないと抱かれるのを嫌います。
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ハナ子は母親とはぐれてしまったようです。こんな小さなうり坊が一匹ぽっちになることはありません。ハナ子は生きていくために食べることができる餌を一生懸命探していたようで、捕まえた場所の近くにある家の裏庭に出没を繰り返していたそうです。ガサガサと音がするので窓から覗くとうり坊が懸命に落下した熟柿を食べていたそうです。 |
オトナになったハナ子
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写真はハナ子です。 大きく育ったハナ子は家から歩いて数分のところにあるイノシシ団地へ入居して山から連れてきたイノシシたちと暮らしております。ハナ子とブイ太(ハナ子の夫)は特別でいつも檻からだしてフェンスで囲った敷地の中で遊びます。わたしに腹を掻いてもらうのが大好きで腹をなでるとすぐにゴロリと横になって目を細めます。またシラミをとってもらうのも好きで気持ちよさそうにします。少し油断をするとイノシシ乗りをして少なくなってきた髪の毛に食いつきます。 考えてみるとわたしの鬣(タテガミ)が薄くなってきたのは自然現象のせいだけではなくハナ子のなせる業かもしれません。 |
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オリの敷地につくってある運動場の一画にヌタ場があります。運動に出してあげると、猪の1番にここにきてヌタ遊びをします。●左の写真は先に使っているのは夫のブイ太、ハナ子は遠慮して待っているかのようですね。このように背中から頭から体中に泥をぬたくります。ヌタ場は野山でもよく見ることができます。よいヌタ場にはハシリ(獣道)がたくさんあり、多くのイノシシが利用しています。 イノシシにとってはお風呂のようなもの?ヌタ場でぬたくったあとは、格好のよい木や竹、岩などに泥と一緒にスリツケてダニなどの寄生虫を落としているようです。 |
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●写真左、真っ赤な臍の緒をぶら下げて母親の乳をさがすうり坊。●写真中、わたしから子どもを隠そうとワラを前足でよせて子どもにかぶせるハナ子、●写真右、子ども達はよくこうして押しくらまんじゅう、重ね饅頭のように団子になって眠ったりします。お腹の中で過ごしていた時間が懐かしいのでしょうか。 そとの世界は厳しいのだぞ。
ハナ子夏服
イノシシは四季に合わせて衣替えをします。だいたい5月頃から毛が抜け初めて6月末には完全に夏服です。写真はハナ子の夏姿です。グラマーな肢体が恥ずかしいわあといっております。9月からまた毛が増えていつのまにかふさふさの暖かそうな冬姿になります。
オリの中だと体を十分擦り付けることができないので野生のイノシシよりも少し夏服に着替えるのが遅れます。
●写真右はわたしの胸ポケットに入っている美味しいものをねだって私にすがりつくハナ子です。自分で写すと上手くとれません。
つづく