山のおもしろい話し

 

 「アカメの国」の山で体験したり見たり聞いたりした面白いお話をお届けします。すべて実話です。お楽しみ下さい。


第11話【イノシシはアカメの肉を好むか?緊迫のリポート07.10.10

 私が飼っているイノシシは世界で初めてアカメを食したイノシシたちかもしれません。いや、おそらく間違いなく世界で初めて食べたに違いありません!。

 いや、まてよ、ひょっとして浦ノ内湾や野見湾を泳いで渡るイノシシがいるそうだから、もしかしたらアカメを食べたイノシシが高知県にはいるかもしれん?まさか潜ってアカメを捕まえることはあるまいが海岸で弱ったアカメを獲って喰ったイノシシが・・・。

 こういう連想がわき上がるという土佐の自然は、やはりすごい。

 世界で初めてかどうかはまあ、おいといて。

 2007年10月7日、いつも御世話になっている高知大学の町田先生と大学院生の阪本君、4年生の松本君、「アカメと自然を豊かにする会」の事務局長上杉さんに手伝っていただいてアカメを計測、解体しました。これまで私一人でやっていたのですが、今回はなんと一度に4匹のアカメです。それも一番大きいのが1メートル、17キロというしろものです。

 これだけ多いと一人では手に負えません。

 手際よく計測し解体していきました。全長、体長、頭長、眼径、吻長、などなど計ってから次にウロコを採集します。そしてDNAを調べるため筋肉を1センチほどのキューブ状に切り取りアルコール漬けにし、次に腹を開いて生殖腺を確認、これはホルマリン保存です。なんと4匹全てが♀の個体でした。次に頭をはずして耳石をとります。私はこれまで数十匹のアカメの耳石をとってきましたので、初めてだという学生さんお二人に体験してもらいました。おかげで私のナイフはボロボロですが、これはまあ研げばよいことです。

 その他、年齢形質の脊椎骨、主鰓蓋骨などをとるために必要な部位を確保したら20キログラム以上の肉が残りました。この肉は最初からイノシシに喰わせようと思っていました。私は常々、生き物の命を奪ったらできる限り利用しつくす主義です。

 ただ、イノシシがそれを食べるのかが問題でした。野生の生き物というのは食生活にしてもかなり保守的です。イノシシは何でも食べるように思われることが多いですが、案外好き嫌いがあります。参考に下記のカンタロウの出来事をみてください。

 翌日、アカメの肉を小切りにして少し食塩を振りかけて、美味しく味付け?をし、大きなたらいと18リットル入りのバケツに入れてイノシシ村へ運びました。

 結果は、カンタロウとほぼ同じ反応を示しました。予想はしていました。

 与えるなり、がつがつむしゃむしゃとたいらげるイノシシ、鼻でつつきまわして「まあ喰ってみるか」というやつ、ニオイをかいでフン!と横を向くヤツと三者三様でした。

  わが愛猪ハナ子は2番目の態度をとりましたが結局全部食べてしまいました。

 つるつる滑るのでオリの外に出てしまったのもあり、カラス、タヌキ、アナグマはその日、その晩は大宴会をやらかしたことでしょう。


第10話【シマちゃんの悲劇】07.9.4

 下記の記事「第3話(05.8.25)シマヘビ、シマちゃんの不可思議な行状」で紹介したシマヘビ「シマちゃん」ですが、一昨年不思議な行動を目撃した同じ時期、全く同じ場所で無惨な最後をとげておりました。

 以前と同じように非常な労力をつかった形跡が残されています。

 小さな穴の周りの草は取り除かれ穴が掘られています。シマヘビがこのような作業を行うにはとてつもない努力と時間がかかるはずです。

 

 シマちゃんの死体を発見する数日前に真っ黒なシマヘビを同じ場所で目撃していました。その時は「おや?あの真っ黒のシマヘビは以前シマちゃんが頭をつっこんでいた穴の中にいたヘビではなかろうか?」と思ったのですがその時はいた場所はそれほど変化を見つけることができなかったのであまり気に留めなかったのです。

 シマちゃんは首を半分食いちぎられて穴を覗き込むように死んでいました。

 以前の作業中もそうでしたが、シマちゃんは夢中で穴を掘っていました。この無防備なところを一撃されてしまったのでしょう。犯人は誰でしょう?私はおそらくイタチかその類の仲間であろうと推測しています。写真では首の部分が細くなって写っていますがこの部位の肉・骨・内臓が食いちぎられているようでした。

 時々ヘビの死体を見ますが、自然界はなかなか厳しいようです。


第9話(06.11.26)カンタロウ狩り(潮干狩りの調子で)

 06.11.20、狩猟が解禁になりワナを仕掛けたので今日は見回りに山に入りました。農道も山道も山の中もカンタロウ(シーボルトミミズ)がウヨウヨ。これほどのカンタロウを見るのは久しぶりです。イノシシも「さぞや喜び山駆け回る♪」状況で大宴会をやらかしたことだと思われます。どうやら久しぶりの雨の影響のようです。普段はまれに見つけるぐらいしか発見できないのですから。晴の天気が続き乾燥が進んだなかで久しぶりに雨が降るとこうした状況が出現します。

(1)

(2)

(3)

(4)

写真(1)おお、でかい。(2)20リットル入りのバケツの中、約3分の一ほど入っています。(3)左のハカリは同じバケツの空を乗せたら1キログラムでした。右はカンタロウ入りで6.5キログラムです。正味5.5キログラムのカンタロウを捕まえたことになります。(4)沢蟹の雄でかなり大型、やはり雨の後や雨のなかに彼らはよく出てきます。沢蟹はミミズが大好きです。しかし、元気なカンタロウを沢蟹が狩るのは難しいでしょう。弱ったカンタロウに群がる沢蟹は時々見ます。ちなみにイノシシは沢蟹が大好物です。

 ワナを見回りその帰り道、あまりにもカンタロウが多いのでこれほどいたら「ひと荷物」できそうだ。イノシシにプレゼントするとなんぼか喜ぶだろう、ハナ子なんぞ「ぶひ!」と飛び上がって喜ぶに違いない。午前11時半、家に帰って蓋つきのバケツ・火箸の捕獲道具をもってスーパーカブに乗って引っ返しました。山道にさしかかると次々と発見し走る間がなくなりました。次から次へと鋏んではぽい、鋏んではぽいとバケツに確保。果てがないし腹も減ったので帰り着くと午後1時半になっており結局2時間のカンタロウ狩りでした。

 さて、目方はわかりましたが匹数がわかりません、最初は数えていたのです。ところがふっと他のことが頭をよぎった瞬間「あれえ?何匹だったろう?」です。私にはたいへん多いパターンでして、すぐに諦めました。そこで10匹をビニール袋に入れて重さを量ってみました。175グラムでした。ですので1匹17〜18グラムほどです。5500グラムですから1匹17グラムだと約320匹、18グラムだと約300匹ということになります。おおよそ300匹のカンタロウを捕まえたのです。

 5.5キログラムというと結構重たいですよ。

 さて、このごちそう?を早速イノシシたちに食べさせてあげようと、カンタロウを軽トラに積み込んで、いそいそとイノシシ村へ。

 みなさん、イノシシたちの反応はどうだったと思いますか?

 (1)もう!喉を鳴らし、舌鼓を打ちながら旨しうどんのようにすすり込む。 (2)せっかくだから、まあ、食べてやるか。 (3)なんだ、こんなもんが喰えるかバ〜ロ〜!

  どういう態度をとったでショウか?『ちなみに猫ではないので(1)のように喉はならしません』。

  なんと、(1)(2)(3)ほぼ同数。これほど別れるとは思ってもみませんでした。 おお!激旨!!とガツガツ噛み、すすり込むのは1/3ぐらいなのでした。ニオイを嗅いで「フン!」と顔をそむけるのが1/3もいたのです。ビックリしました。


第8話(06.1.2)所払い

 

 数年前の話です.我が家のニホンミツバチの巣箱をみますと,その前にでんと巨大なガマガエルが鎮座しておりました.おお,これほどでかいのは久しぶりに見ると感心しながら見ておりました.よく見ていると何と巣箱に出入りするミツバチをでかい舌をだしてはぺろりと食べているではありませんか.次から次とぺろり,ぺろり,ぺろり,ぺろり.

 あの軟らかそうな舌が刺されても,よくも痛くないものだと感心していましたが,こりゃあいかん食い尽くされると心配になりました.ガマはどこかへ移動させることにしました.直線距離で約30メートルほど離れたところへ持っていって藪の中に放しました.翌日,またも巣箱の前に陣取りぺろり,ぺろりとやっているのです.

 こんどはもうミツバチを食べてはいけませんとよく言い聞かせて,100メートルほど離れた谷川に放しました.翌日,またもまたも,巣箱の前でぺろりぺえろりやっているのです.こんどはくどいほど言い聞かせながら車に積み込んで2キロほど離れた潅漑用のため池の近くに放しました.さすがに一山越えると数年たってもよう帰ってきません.

 昆虫学者 ファーブルの作詞・作曲したものに「頑固なヒキガエル」というものがあるそうですね.わたしが相手をしたこのヒキガエルもかなりな頑固者でした.フランスのヒキガエルも日本のヒキガエルも同じような性格をしているのでしょうか.


第7話(05.10.31)イノシシの寄生虫

 赤く錆びたナイフの先のほうからセメントにかけてはふまれてボロボロになったフィラリア?フィラリアは血管の中にいるのだそうです。

 10月5日に捕まえた(山日記に掲載)イノシシに取り付いていた寄生虫の話です。相棒が忙しいため丁度休みだった妻に手伝ってもらって解体をしていたときです。

 解体の手順ですが、先ずイノシシの毛を抜きます。それから、足先を関節から切り離します。それから首にぐるりと深く骨までナイフをいれてからグリッとねじって、頸椎骨の関節をナイフできり、頭を取り外します。それから首から胴体、腹部と一直線に2分するようにナイフを入れます。胸部は肋骨があるのですが、腹部は切りすぎると腸や膀胱などを傷つけてしまいますので、慎重にしないといけません。この一連の作業をしていて、股間部を切断しようとしていた時です。ふっと気づきました。

 ハリガネムシ(昆虫のカマキリに寄生する生き物)の様な形と大きさ、半透明でしろっぽいあるいはアニサキスをぐ〜んと大きくしたような生き物が、ポロリと落ちていたのです。とにかく好奇心旺盛なわたしですので、おや!こりゃあなんじゃろう?よくみると少し動いています。曲がりくねっているのですが、長さはかなりありそうで20センチ前後とみました。たくさんのイノシシを解体してきましたが、初めて見る生き物です。これはアルコールで固定してサンプルにとっておこうとおもって少し離れた場所に置いて、「これは、あとでアルコールにいれてサンプルにするので踏まんといてください。お願いします。」と妻にくれぐれも頼んだのです。

 頼んだ相手が悪かったのか、十分妻のことはわかっていながらそこに置いたわたくしの不覚なのか。気がついたらみごとに踏まれておりました。知り合いの大学の先生に寄生虫をやっている方がいて、プレゼントしようとおもっていたのです。

 あとで、そのことを話すと、とても残念そうでした。こんどから妻が側にいる時は足がとどかない高所へ置くことにしよう。

 先生のお話では、「それはたぶんフィラリアでしょう」。わたしはあの犬の大敵で有名なフィラリアですか?と驚いたことです。フィラリアはイノシシ、カモシカなどでにも寄生しているそうです。


第6話(05.10.14)ブイ子のダニ

 ハナ子の娘でブイ子といううり坊がいます。誕生から5ヶ月ほどたちました。胴輪をしてときどき散歩をしています。山道にいって落ち葉の下のかんたろう(シーボルトミミズ)を探してだして食べるのが大好きになりました。教育係のわたくしの成果です。8月25日、オリの中に入ってブイ子のシラミとりをしていたときです。しっぽにヘンなものが付いています。あれ?とよく見るとダニです。犬などにたくさん食いつく、家の近くに多く棲むダニです。名前は知りません。

 どうやら、散歩途上で山道の草むらなどで取り付かれたのでしょう。発見した時はもう満腹状態で少し触っているとポロリと落ちました。当然、記念撮影後、靴底でぷちんと死刑です。


第5話(05.9.24)山の嫌われ者の二大巨頭の世にも珍しいセット(本邦初公開か?)

 山の嫌われ者といえば、そうですね、先ず思いつくのがハミ(マムシ)、ダニではないでしょうか。いや、ハチだ、毛虫だ、毒蛾だと好みと同様にこれも十人十色でしょう。ハミには噛みつかれてみて、嫌われる理由がよーくわかりました。完全に納得です。まっーたく異議はありません。ここはわたくしの偏見と独断でやはりハミとダニということにします。

 ダニですが、イノシシをやっつけるために山には通い詰めました。かなり酷い目に遭いました。ワナを掛けるのはハシリとよぶ獣道です。獣道はイノシシだけでなく、色々な動物が通ります。タヌキも、ウサギも、シカもカモシカも通ります。まあ、ほとんどの動物が通る獣道はさしずめ国道というところでしょうか。当然、カモシカが好む道、シカが好む道、それぞれの好みの道というのはあります。私道というところでしょうか。イノシシなど少し横には通りやすそうな所があるのにわざと険しいところを通っています。相棒と「どうしてこんなく(所)を通るがじゃろう?あいつらの気持ちはわからん」とよく話します。

 ワナを仕掛けるのは、このハシリにかけるのです。ハシリならどこでもよいかといえばそうではありません。ワナが見破られにくい場所にかけないと駄目で、そのほかにもいろんな留意点があります。

 そうだ、ダニの話でした。ダニはほとんどの動物に食いつきます。食いついて十分血を吸って満腹になると動物からはなれて、ぽとりと落ちてそこら辺で産卵するようです。そこで産まれた子ども達がまた、その獣道を通る動物を待ちかまえていてやってきた獲物にむらがるのです。まさに群がるというべきでダニが多い獣道をしばらくあるいてふっと足をみると、小さな芥子粒ほどのダニがわらわら、わらわら、わらわらとズボンの裾から登ってくることがあるのです。

 マムシは傷みと腫れに一ヶ月以上苦しみます。ダニは痒さに苦しみます。痒みのいやらしさは群を抜いていて咬み痕の赤みとともに半年以上も続くこともあります。痒みは落ちついて忘れていてもお酒を飲んだ時とか風呂に入った時とか血行が良くなると突然ぶり返してきていらだたせられます。

 また、ダニは食いついて血を吸いはじめると容易にはひき剥がせません。無理に取り除こうとすると胴体と頭部がちぎれて皮膚に残ったりします。解体のとき熱湯をかけて毛抜き作業をするのですが、イノシシの皮膚に食らいついたダニは死んでも離れません。山日記にダニの食らいついた写真を紹介していますが、彼らが離れた痕はひどいのは皮膚の中に袋がができていて膿がたまっていることがあります。潰瘍のようになっていることも多いのです。おそろしやダニ!

 さて、その嫌われ者ちゃんぴおんの二大巨頭がなんと一緒になっていました。一緒というより、ハミが迷惑していました。信じられますか。ハミの首筋の後ろにダニが食いついて血を吸っていたのです。ビックリしました。わたしはダニは温血動物にしか食いつかないと思っていたのですが、思い違いでした。血さえもっていれば温かろうが冷たかろうがどうでもよいようです。この姿勢ははっきりいって好きです!。

 食いつくのが身上であるハミが食いつかれてエライ迷惑をしているのですからお嗤いというべきか、ざまあみろと思うべきか、しかし、おそろしやダニ!あんたはえらい。

 このハミは半月ほど水を少し入れた広口瓶にいれて腹の内容物を出させてから水洗いしてから度数40のブランデーに漬け込みました。その間ダニは食いついたままで離れませんでした。あっぱれ!ダニ!


第4話(05.9.19)どうすべきか 捕まえるべきか 殺すべきか 

 イノシシ畜舎の近くで畑の周りの草刈りをしていました。草刈り機でぶんぶんと刈っていますと、かなり大型の上等のハミ(マムシ)がでてきました。習慣とはおそろしいもので,長靴を履いた足で踏んづけて確保しました。まてよ、さて、どうしよう。いつものように捕まえようか、それとも殺してイノシシに喰わそうか、それとも逃がしてやろうか。少し前、噛まれて痛い目にあっているので慎重です。先ず、逃がすという選択肢は消えました。まあ、最初からほんの少ししか逃がすことは考えませんでしたが。しかし、今度捕まえようとして失敗して、また、噛まれて病院へ行くとカミさんがかわいそうだなあ(妻は病院の看護師をしておりまして、ときどき入院をすると、長野さんのご主人ですかと、医師や同僚のみなさんから挨拶されます)。6日間入院していましたが、噛まれた原因を話すと誰も同情してくれないのです。ハミ酒をこしらえようと生け捕りにしていて失敗、反撃されて右手人差し指の先の腹側を噛まれてしまったのです。こう話すと10人中、10人が嗤います。見舞いに来てくれた、猟の相棒などは、病室にはいるなり「ははははは」と笑いながら「おんしゃあ、ハミをなめちゃあせんかはははは」「ちったあ懲りたかはははは」と一言ごとにははははと笑うのです。

 また、入院にでもなったらカミさんは「もう恥ずかしい、仕事へいかん」と言い出すかもしれん。そうなるとこまるなあとも考えたのです。

 決めた。

 殺すことにしました。踏みつけていた足をどかしてハミを自由にしてから草刈り機で頭をはねて殺してから、頭は池の中に放り込み、身体はイノシシに放り込んでやりました。実に旨そうに喰ってしまいました。

 ハミに噛まれた

 上記のようにハミに噛まれました。2005年8月27日、夕方の4時過ぎのことです。日課のイノシシの世話にバイク、スーパーカブに乗って行く途中ハミに出会いました。道路の真ん中にいました。おお!と行き過ぎてからブレーキを踏んでバイクを止め、スタンドをたててから振り返りますと、よたよたと逃げ出してもう道ばたまでいっています。いそいで駆けつけて足で踏みつけました。踏みつけることが出来たのは、しっぽのほうで胴体の大部分はもう草むらの中に入ってよく見えません。

 捕まえ方

 ハミを捕まえるのは色々方法があります。

 1. じっとにらみつけて人差し指をピンと立て、その指先をハミの方に突き出してくるくるくるくる回してハミの目を回してグタッとしたところを見計らって首根っこを人差し指と拇でつかんで確保する(ウソ)。

 2. そこらにある棒きれで身体を押さえつけて、首根っこを指で確保してもう一方の手で尻尾をつかまえる。棒きれは2本必要です。

 3. 足で踏みつけて(一度で頭だけ出して踏みつけるというのは難しいのでなんどもやって、あるいは棒きれも併用して)頭だけ靴底から出しておいてから首根っこを捕まえて確保する。わたしはこれを多用しています(必ず長靴着用のこと、わたしは普段長靴を常用しています)。

 4.最初から捕まえるつもりで道具(ハサミ・大型ポリバケツなど)を用意して、発見したらハサミで鋏んで容器にポイと入れる。

  などなどが主な方法です。

 さて、道ばたは切り立っていましたので、不安定です。これは少し無理があるなあと思ったのですが、はじめてしまったので中止する気はまるで起こらなかったのです。なんどか踏みつけ直して、苦労しながら何とか首根っこの近くを踏んづけた、と、思っていたのです。手をのばして首根っこを捕まえようとしたその時、フッと不安というか悪い予感というようなものがよぎったのです。こんな気持ちは初めてでした。そのとき止めておけばよかったのですが、あっと言うまもなく人差し指に反転したハミの頭が「かつん」というような感じであたったのです。

 しまった!と思って、指を見ると人差し指、腹側の先の方に小さな針先のような穴があり血がぷくりと盛り上がっていたのです。ハミもかなり不自由だったようでキバの痕は一カ所だけでした。

 毒を絞りだそうと左手できつくつまむと、つーと小さく一筋血が流れ出ました。そのときはそれほど痛くありませんでした。

 土曜日でカミさんは休み、丁度家にいてくれました。指をきつく握って歩いて帰り、「おーい、ハミに噛まれた。病院へ連れて行ってくれ」。

 病院で、治療を始める頃に激痛になり唸りました。入院して2日間はもう激痛で座薬の痛み止めのお世話になりました。48時間ぶっ続けの点滴でした。三種類で一つは抗生剤、一つは解毒剤、もう一つはどんどん水分補給をしておしっこで毒を流し出すのが目的とのことでした。ハミの毒は腎不全が怖いといわれました。

 いやあ、腫れ上がりました。痛みは噛まれた部位によってかなり違いがあるようです。足などの場合あまり痛まないこともあるそうです。 

病名 マムシ咬傷

 血管毒であるマムシ毒によって出血作用、血管内凝固作用、筋凝固融解作用がある。合併症としては、感染、腎不全などの多機能不全、筋肉融解症、神経障害等。

 腎不全が発生した場合、人工透析が必要な場合もある。人工呼吸器を使用した例もある。

 けーきさんが紹介してくださったhttp://shizennnonakade.hp.infoseek.co.jp/nifty/Homepage/2002/2002.8.4/mamushikoushou.htm を参考にさせていただきました。

 噛まれてから26日後の9月21日現在も、人差し指は腫れ上がっていて、左の指の倍ほどになっています。傷口からは浸出液が出ています。指先はしびれていて不自由です。ここ数日仕事で右手をかなり使いました。そうすると、腫れがひどくなり、ほとんど正常に戻っていた右手の手のひらが腫れ上がってきました。痛みは噛まれた人差し指、となりの中指付け根の関節、それから右肩まで鈍い痛みがあります。ハミあなどるなかれ です。

 よいこのみなさんはハミを見ても捕まえようとはしない方がよいですよ。指で直接つかむというのは失敗した場合痛い目に遭うこと請け合いです。

 この話題をこの場に載せようか、山日記にしようかと迷いました。しかし、周りの反応をみておりますと面白い話のほうがよさそうでした。みなさん笑うのです。本人はあまりおもしろくはありません。まあ、他人の不幸は蜜の味と申します。お楽しみいただけましたでしょうか。

咬み痕のその後:05.10.28の写真です。咬まれたのが8月27日でした。ちょうど2ヶ月後ということになります。これまでに2回指先が脱皮?しました。咬まれた場所を中心に皮膚が厚く硬くなって咬まれた場所は深くカサブタになりやがて剥がれてしまいます。今回は気味が悪いような緑がかった黄色になり痛みが強くなってきました。妻は「早く病院にいかないと指が腐って落ちてしまいますよ。これは化膿しています」というのです。重い腰を上げて病院に行くと「おお!さすがはマムシ。やはりスゴイですねえ!」と外科医が感心します。刎ねてみましょうといってメスで切開しました。わたしは横になっていたのですが、「臭い!」と先生が顔をそむけます。みどりがかった膿がどろりとでています。酷く化膿していました。

 膿を出してからは回復が早くて、11月28日現在では咬み痕がささくれだって荒れてはいますが外見はほとんど現状回復というところです。しかし、しびれはまだかなり強く残っています。

咬み痕、その後のその後:2006年1月25日現在の咬み痕の写真です。第二関節から先がささくれだっています。咬まれた痕は少しへこんでいます。爪が変形してきました。しびれはあいもかわらずで、ここしばらくは快復の兆しはありません。まあ、人の体の快復力はたいしたものですので、そのうちなんとかなるだろうと、思っています。

    


咬み痕、その後のその後のその後:2006年11月6日の咬み痕の写真です。咬まれてから1年2ヶ月あまりの時間が経ちました。ささくれは仕事の成果かものしれませんが、咬み痕がはっきり判ると思います。踵の角質化のように皮膚が分厚くなり少し盛り上がっております。白っぽく見えるところが咬み痕です。中心部の白みが薄いですがここは咬まれた当初切開したり、昨年10月、膿が溜まって切開したところです。

 指のしびれはほんの少し回復してきているかなあと思う程度です。

第3話(05.8.25)シマヘビ、シマちゃんの不可思議な行状

 春先から田圃の畦でいつも出会うシマヘビがいました。何匹かいつもいるのですが、そのシマヘビはほとんど同じ場所で日向ぼっこをしていました。シマヘビの顔つきでそれぞれ判別するほど親しくはないのですが、サイズと出会う場所でほぼ見当がつきました。何度もなんども出会うのでわたしはそいつに『シマちゃん』と名付けていました。

 2005年7月13日の午後4時30分ごろの出来事です。

 夕方いつもイノシシたちの畜舎の掃除のため谷川からポンプで水を汲み上げて床を洗ったり、飲み水の補給をしています。日課であり、一日たりとも抜かすことのできない仕事です。生き物を飼育するとそうした作業がいくつか有り、縛り付けられて少しつらいところでもあります。この日も、ポンプを回すためエンジンをかけに中稲の畦を歩いていました。シマちゃんに出会いました。遠慮なく歩くとすぐに逃げ出して姿を隠しました。エンジンをかけてもどってくるとシマちゃんが同じ場所にいました。またも気にもせずに歩いていくとシマちゃんは同じように逃げました。それから40分ほどかけてイノシシの小屋を洗い終わり、エンジンを止めようと歩いているとまたもシマちゃんが同じ場所で何かをしています。その時はさすが鈍い私でもオヤ?っと思って立ち止まったのですが、シマちゃんの方も私に気づいてさっと逃げ出してしまったのです。

 何をしていたのだろう?シマちゃんのいたところをしげしげと眺め回しました。周りとは明らかに違いがあります。数カ所穴を掘ったような痕があります。シマちゃんの頭があった所の穴が一番大きく深いのでした。穴はイノシシが鼻で掘ったような感じのものでした。おかしいなあとは想いながらもしかしたら産卵のために何かをしていたのかもしれないと思ったのでした。その場を離れエンジンを止めてこんどは用心しながらもどると数分しか経ってないのにシマちゃんは同じ場所に戻って同じように変な行動をしています。これほど同じ場所に執着するのは尋常ではない。わたしはきっと産卵行動だろうと見当を付けました。そっと後ずさりして田圃の畦を大回りしてビデオカメラとデジカメをとりに家に帰りました。

 写真を写した時は穴を掘り始めてから、おそらく数時間は経過していると思われます。上の左の写真のように穴の周りは田圃の畦で草がたくさん生えています。そこに数十センチにわたってシマヘビが頭で土を掘り返しています。頭をスコップのように使うのではなく、ぐいぐいとぐりぐりと押しつけて穴を掘るのですからものすごい体力と根気と時間を使わないとこんなに土を掘ることは出来ないでしょう。カメラを家からとってきてからは一点を集中的に掘り出してとうとう頭をすっぽりと突っ込める穴を掘りました。上の右の写真はその頭を抜いたところですが、穴の奥に何か黒っぽいモノが見えます。

  写真とビデオで撮影しながら40分もたったでしょうか。ときどき穴から頭を出すのですが、そのポカッと開いた穴からは黒っぽい物体が見えます。頭を穴に突っ込んでいる時に出来るだけ近づいて撮影したのですが、それでも時々頭を出すため1メートルぐらいまでしか近づけません。シマちゃんとわたしを隔てるものはなにもないのです。穴の中がとても気になるのですが、それ以上近づくとシマちゃんに気づかれそうでした。穴の中の黒い物体はよく見ていると少し動いています。いよいよ好奇心がふくれあがります。

 夕方であり、ぷーーんと嫌な音がしだしました。ヤブ蚊です。右のおでこにとまりました。シマちゃんがいつ頭を出すかわからないので右の指を少し動かしてヤブ蚊をおっぱらいました。頭の周りをぷーーーんという音がまわります。

 前傾姿勢でデジカメを突きだして撮影しているとシマちゃんが頭を出しました。擬人化するとはあはあ、ぜいぜいと息をついているかのようです。そのときです、たぶん2匹目のヤブ蚊が突きだした左手首の時計のバンドの手前に留まってなんということでしょう。私の血を吸い始めたのです。シマちゃんの頭は外に出ています。ここは我慢のしどころだとじっとしていました。だんだん、だんだんと痒みが強くなってきます。自分の手首に留まった蚊のお腹がふくれるのを眺めるというのは、生まれてこの方初めての出来事です。もう、痒くてかゆくてどうしても我慢ができなくなり、シャッターに置いていた右の人差し指と拇を使って追い払おうと少しだけ、少しだっけ右手を動かしてしまったのです。一休みしていたシマちゃんが器械にスイッチが入ったかのように、頭をカチリっとこちらにむけてぴたっと止まったのです。

 ヘビの時間というのはどんなものなのでしょう?頭をこちらに向けたまま、たまに舌をぴろぴろとだすのですが、ピタッと動かなくなって時間はどんどん過ぎます。根比べだとじっと木化けしていたのですが、こ、腰がいたくなってきました。蚊の方は満足したのかいなくなっていましたが、私の躰がもたなくなってきました。腕を突きだして前傾姿勢のまんまなのです。

 シマちゃんの勝ちです。とうとう我慢できなくなって「ちっくしょう」といいながらやけくそで休めをしてしまったのです。

 シマちゃんはあっというまにいなくなりました。こんどは穴の中がとても気になります。穴の中を覗き込みました。やはり黒っぽい、艶を持った物体が少し動いています。まったく見当もつかないものです。しばらく覗き込んでいたのですが、このままではラチがあきません。ええいままよと指を突っ込んで穴を広げることにしたのです。少しずつ少しずつ、土を削り取って穴を広げました。直径3〜4センチほどに広げて覗き込むと、何と、ヘビの腹が見えています。腹の足の役目をするウロコがざわぞわと動いています。やはり黒っぽいのですが、何というヘビなのかわかりません。

 ヘビの種類を確かめたいとおもいましたが、それ以上穴を広げるのは止めました。同じシマヘビであったとしてもわたしにはその行動はどう考えても分からないのです。産卵活動なんだろうか、それとも穴の中のヘビがモグラか、ネズミかを捕まえて食べていたのを横取りしようと奮闘していたのだろうか?などと考えたのですが、シマちゃんがこれほどの労力と時間を使って何をしようとしていたのか?

 ヘビの気持ちはわかりません。

 けーきさん、教えて。

(下記はけーきさんが「アカメの国」のBBSに書き込んで下さったのをここに転載したものです)

 山のおもしろい話し  投稿者: けーき  投稿日: 8月27日(土)16時38分15秒

 長野さん

 なかなか面白いものをご覧になったようで。

 はっきりと断定はできませんが、おそらくそれだけ労力をかけているところから産卵に関連する行動かと思います。この時期はちょうどシマヘビの産卵期で、条件の良い産卵場所を探して別のヘビと鉢合せしたのではないでしょうか?写真のシマちゃんは少しお腹が大きいように見えますし。

 それから黒い蛇もおそらくシマヘビです。メラニン色素に変異が起こって時々「カラスヘビ」と呼ばれる真っ黒な蛇がいます。それではないでしょうか?

 あと、考えられることといえば、シマちゃんは獲物を追いつめていたということでしょうか。シマヘビはカエルやトカゲなどをよく食べているみたいですが

ヘビを食べるところも目撃されています。同種であっても自分より小さい個体であれば自然界では「獲物」になりえますから。もしその穴に卵なんかあったらもう

それはご馳走以外のなにものでもありません。

 それから、ヘビの感覚は音を全身で聞き、ニオイを舌で味わって判断するようです。舌をチョロチョロさせたのは怪しいニオイを察し、長野さんが動かれた音(振動)で

ヤバイっ!と思って逃げたのでしょう。ハブなどはそれに加えて熱センサーも持っていて、これが発達した種類は熱で物を判別しているとも言われています。

 まぁでも、あくまで人間の勝手な分析です。ヘビの巳になってみなければ分かりませんね。笑

 しかし、ビデオまで撮られるとはいつもながら長野さんの好奇心旺盛には頭が下がります。

 


第2話(05.6.26)タクト

 家の上の山へ山桃をとりに行きました。午後1時すぎに山桃の木に登り取り始めました。父親が若い頃、野生の山桃の木に「カメゾウ」という品種を接ぎ木して大きくなった木です。地上10メートル以上はあります。山桃の木はとてもさくくて折れやすいため危ないので、近くの手頃な木を切って運びあげて足場を組みます。わたしはその上、安全ベルトをしてフック付きの紐を丈夫な木や足場にかけて安全を確保しています。高所にたいしての恐怖は普通だと思いますが子どもの頃、何度も木から落ちて痛い目に遭ってきました。子どもの頃と違い、いまや作物の世話、数十頭のイノシシの世話、妻との対話、一日たりともおろそかに出来ない、そういうしがらみにがんじがらめで、木からぶち転けて死亡、あるいはよくって入院などという事態はだめなのです。

 山桃をちぎっては食べ、ちぎっては腰に付けたツボカゴに入れ、収穫に勤しんでおりますと、近くの木々のあいだから突然3匹のヒグラシが3方から一斉に鳴き始めました。それこそ合図に併せたように一斉にです。不思議に思いました。演奏者が指揮者のタクトに合わせて見事にそろえた演奏を始めたようです。山桃をほおばりながら、ヒグラシを一斉に鳴かせたのはどんなタクトが振られたのだろうと考えました。それまではまったくヒグラシの声は聞こえなかったのです。

 時間は14時8分です。

 日光の照射角度が関係あるんだろうか?あるいは日光の強弱?強弱では突然厚い雲に隠れたら真昼でも鳴くかもしれない?ヒグラシの体内時計?

 それとも全くの偶然の出来事なのでしょうか。

 どなたか、研究されて究明されたかたがおいでましたら、是非、ご教授ください。

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 第1話(05.6.19) ありゃあ!脱腸か?

 写真のイノシシは山からおろしてきて、処理を始めたところです。左は相棒が熱湯をかけながら毛抜きをしているところです。その右側の前後の足を括られているイノシシのお尻に注目ください。白っぽい丸いものが目に付くでしょう。ダニです。

 二枚目の写真はそのダニに近づいて写したもので指はわたしのおやゆび。拇の爪より少し大きいぐらいですね。これはダニがイノシシの血を吸って大きくふくれたものです。

 ダニはよく付いていて数種類は頻繁に見ます。写真のダニが一番大きくなる種のようで最大のものでは500円硬貨ほどのものを見たことがあります。

  

 ワナにかかったイノシシは子ども(約30キロまで)は殺さずに連れ帰ってオリに入れて肥育してから食ってやろう思っております。最初は数頭と思っていたのですが、泥縄式に増えてきました。ある日オリに入れた新入りを見ておりますと腹に大きな、そうですね500円玉ほどの白い丸いものが見えるのです。何か?とおもってまじまじと見たのですが、わかりません。ただ人工物ではなさそうなのです。おかしい?ワナにかかった時にあばれて木が刺さったりして、腸の一部がとびだしたのだろうか?それにしては出血の様子はない。もともと脱腸でもあったのだろうか?

 疑問が解決したのは翌日でした。いつものようにオリを洗浄しにいくと例のイノシシの腹についていた白っぽい物体がなくなっています。あれ、どうしたんだろうといぶかりながら床をホースの水で洗っているとコンクリートの床に丸い白い物体が落ちていたのです。よく見ると何とダニでした。思わず笑ってしまいました。このときがこの巨大なダニに気づいた最初でした。イノシシもたいへんですね。

 ダニは血を吸って満腹になると自然に落下してそこらへんで卵を産んでいるようです。ただ、コンクリートの床ではそうもいかずほとんどイノシシが歩き回るうちに踏みつぶしてしまいます。


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 つづく