アカメ苦いかショッパイか

アカメの味について

アカメは美味しいか?とよく聞かれます。

 答え=たいへん美味しいです。

 しかし、アカメほど味についての評価が分かれる魚も珍しいと思います。ある人はあんな不味い魚はない、とても食えたものじゃないと言う人がいます。この不味い派が六対四か七対三で多いようです。わたしは「不味いじゃろう」と同意を求められたときは、「そうかもしれんねえ」と否定しません。ものの味なんて人によって違うもんです。

 アカメはクサイ!と言う人がいます。(魚はクサイものです)

 アカメはヌルがすごいんです。牛のよだれのようなヌルがヌルヌルと皮膚から出ます。アカメの臭いの素のひとつはこのヌルかもしれません。

 牛のよだれといっても現在、普通の生活している人にはわからんでしょうね。牛は反芻するせいかよだれがよく出ていました。まてよ、よだれが多いのは夏だったかしらん、あれはひょっとして汗としてでてたんだろうか?

 わたしが子供の時代には農家には必ず一〜二頭はいたのです。現在のトラクターであり、貨物自動車であり、肥料の生産もとであり、時には背中に乗せてもらえる高級乗用車でありたいへん有用で大切な生き物だったのです。牛の大きな黒目がなつかしいなあ。この牛が農家から消えていく頃から世の中がおかしくなっていくのです。

 それからアカメは普通よりも血の量が多いんでないかと思うほど血が目につくのです。釣り上げてそのまま殺してしまいますと、数時間後下側になった皮膚、鰭などに血がまわって一帯が赤くなります。血抜きをするときも驚くほどの大出血します。この血もくせものの一つなのです。血抜きをしていない魚は総じて不味いものですが、アカメは極端に悪いのです。

 美味しくいただこうと思えば釣り上げた直後の適切な処理が大事です。先ずきちんと血抜きをしてシメてからクーラーにいれて持ち帰ることです。それからヌルを束子を使ってきれいに落とします。流水で流しながら束子でごしごしこすり落とすのです。鱗を落とす前とうろこをひいてからの二回はこの作業が必要です。そうでないと下拵えのときにヌルが肉についてしまいます。

 こうしてちゃんとした手順をふんで料理したアカメはそりゃあおいしいです。

例外の味

 ただし、何事にも例外があるものです。1998年8月3日浦戸湾でアカメが釣れたからサンプルに提供するので取りにおいでと、現場から携帯電話で連絡をもらいました。駆けつけますとストリンガーに繋いで生かしてあるアカメは63.5センチ、3.3キロのアカメでとても美しい魚体でした。

 サンプルに肉は不要なのです。浦戸湾のアカメは食べたことがなかったので、一度、食べてみようとおもっていました。そこで、現場できっちり血抜きをし手順どうり処理をしたのですが、結果は予想どうり「不味い!」でした。いつも浦戸湾でアカメを釣っている方の話でも浦戸湾内で釣れるアカメは総じて不味いそうでリリースしているといいます。    

 スズキもやはり不味いものが多いそうですが、近海の魚族の食物連鎖の頂点に立つ彼らにしてみれば、人間に言いたいことがきっとあるでしょう。

本来の味

 このように、住む場所で味は違ってしまいますが、本来のアカメは美味しいのです。五十センチから七十センチクラスまでのアカメでしたら、刺身からはじまってどんな料理に使っても絶品です。八十センチを超すようになったら刺身だけは少しだけ味が落ちます。油を使う料理が特によいようです。フライ・てんぷら・ムニエルなど、そして、塩焼き、カマの塩焼きなど(考えただけでよだれが出そう)卵巣の甘辛く煮たもの(おお!たまらん)。

 スズキ・ヒラスズキ・カンパチよりも家の子供たちはアカメを喜びます。

   


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